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トップに時たま掲載する、情景シリーズです。 これは実際に僕が行き、その場で文字の写生を行った文章の清書です 何の変哲もない場所や、そこにいる人々。 季節によって、風によって、空気によって移り変わるそれを、感じてもらいたいです。 日陰に入ると寒気がするが、十二月にしては暖かかった。 風もなく、さび付いた時計は二時五十分を指そうとしている。 冬の澄んだ空気が葉の落ちた木々を包み、公園の古い金具を冷やしていた。 「あと五回だよ」 老人の優しそうな声が聞こえる。 滑り台を登る女の子は五回、と聞き返しながら滑り降りると、急いでブランコへ向かった。 無数の、鳥たちの声。 沈みかけの夕日が、その音色を彩る。 「何してるの？」 木の回りの台に座る少年二人に、老人が聞く。 彼らは手に持つ模型飛行機を誇らしげに見せ、飛ばそうとしてるんだ、と笑顔で答えた。 プロペラをゴムの力で回す簡易的なそれは、もうほとんど完成しているようだ。 黄色に彩られた葉が、また落ちた。 小さな手洗い所に老婆が入り、寂しげな電話ボックスからは人が出て行った。 「危ないよ」 背の低い鉄棒に腰掛けていた老人が、女の子に言う。 彼女は可愛らしい動作でちょこん、とブランコを降りた。 「ほら、お兄ちゃん達が飛行機を飛ばすから、見てごらん」 プロペラを指で回していた少年はニカッと笑い、飛行機を女の子に見せる。 遠くの方で、子供が遊ぶ声と、女子高生の話し声と、車の通る音がした。 女の子がベンチに座ると、少年達は構える。 そして木の枝のない空へ向けて、勢いよく飛行機を放った。 風が、吹いた。 それに乗り、飛行機はまるでそれそのものが空気であるかのように、空へと飛び出した。 近くを通りかかった子供連れの家族はわぁ、と感嘆の声を上げ、老人は拍手をした。 女の子は、目を丸くしてその白い飛行機を見つめている。 もう一度、風が吹いた。 女の子が目を輝かせて飛行機を指さし、笑っていた。 その頃、飛行機はまだほんの少し青が残る空にいて、雲のない上空を目指していた。 |